すごくわかる

非日常の

シアター

映画を観に行った。


おそらく、最後に映画館へ足を運んでから一ヶ月くらい経っていた。今日まで上映される映画がどうしても観たくなって、試験まで三日、勉強の進捗は僅か、だけれども今日を逃したら映画館で観ることはないだろう、と逡巡したのち、切符を買っていた。


映画館が好きだ。

映画館で映画を観る醍醐味は、あの素晴らしい施設の雰囲気を感じられることに尽きる。目の前に広がるスクリーン、薄暗い照明、座りっぱなしであることを想定され尽くした椅子、文字に起こせばなんでもないこれらが、他では味わえない心地良さを与えてくれる。

予告が流れた後、本編が始まる直前にスクリーンが広がる瞬間、僕はそのほんの数秒に息を呑んでいた。あの瞬間が好きな人、きっとそれなりにいるのではないだろうか。

そのわずかな間に、僕は特別な空間に想いを馳せた。思えば今日はいいことがなかった。朝は満員電車に揺られヒールで足を踏まれた。万全の睡眠ののちに臨んだ授業もあっけなく意識を飛ばした。

それが、このスクリーンを前にしたら、なんてことはないということに気づくことができた。果てしなく広がる映像は、僕の人生だ。

映画館が好きだ。


観終わってから、少し人生が変わった気がして、この二時間の過ごし方に満足した。だが帰りにトイレへ立ち寄り、鏡に映った学ランを着た自分を見て、思わず笑ってしまった。もうしばらくは子どもでいられるようだ。